Linuxを使ったことがある方はご存知かと思いますが、インストール後、日本語環境で快適に使用するためには細々とした準備が必要です。
今後も気になる中古ノートPCやWindowsタブレットにLinuxをインストールする機会があると思うので、都度このページを見れば完璧に初期設定ができるように、備忘録としてまとめておくことにします。
なお、インストールするLinuxは主にDebian、Ubuntu系を想定しています。FedoraやRed Hatなども試し次第今後追記します。(当記事にはKubuntu24.04環境でのスクリーンショットを掲載しています。)
- カーネル、パッケージを最新の状態に
- 日本語入力の設定
- ディレクトリを英語にする
- 英字キーボードを設定する
- ブラウザをインストールする
- 仮想キーボードを設定する
- タッチジェスチャーを設定する(Xfce系)
- WindowsタブレットにおすすめのLinuxディストリビューション
カーネル、パッケージを最新の状態に
sudo apt update && sudo apt upgrade -y
ターミナルより、sudo apt updateでリポジトリを最新の状態にし、sudo apt upgradeで最新のパッケージをインストールします。引数-yを入れることで、自動的に、パッケージをインストールするかしないかの問いに「y (yes)」と答えたことになります。
ディストリビューションによってはGUIでパッケージなどのアップデートができますが、これに関してはそんなに難しいコマンドでもないので、僕は定期的にこのコマンドでアップデートしています。
日本語入力の設定
日本語キーボードで、WindowsPCと同じ感覚で日本語を入力するにはMozcをインストールする必要があります。MozcはGoogleがオープンソースとして公開しているIME「Google日本語入力」であり、Linuxではfcitx5-mozcもしくはibus-mozcが主に使われています。fcitx5-mozcのほうが多機能ゆえか好まれて使われている印象ですが、Ubuntuに関してはibus-mozcがデフォルトで入っているのでそれを使うのが手っ取り早いです。GNOMEのオンスクリーンキーボードがfcitx5でうまく動かないというのも理由です。
今回はfcitx5の設定を紹介します。
sudo apt install fcitx5 fcitx5-mozc
ターミナルで上記のコマンドを実行し、fcitx5およびMozcをインストール後、入力メソッド設定を「日本語」から「Mozc」にします。
初期設定では文字入力時の初期状態が「かな(IMEオン)」となっていますが、そのままだとターミナルを使うときに、うっかりひらがなを暴発させてしまって面倒なので、初期状態を「直接入力(IMEオフ)」にしておきます。
ディレクトリを英語にする
日本語でLinuxをセットアップすると、当然ながらディレクトリ名が日本語になります。ターミナルを触らないなら、そのままでも特に支障はないのですが、ターミナルを触るならディレクトリ名が英語だったほうが断然操作しやすいです。
LANG=C xdg-user-dirs-update --force
ターミナルで上記のコマンドを実行すると、新たに英語名のディレクトリが作られて、ユーザーディレクトリに設定されます。元々存在した日本語の元ユーザーディレクトリは残存しますが、中身を新たに作られたユーザーディレクトリに移し替えたうえで、削除すれば良いです。
一部のディストリビューション(Ubuntuなど)では、再起動時にディレクトリ名を英語から日本語に戻すか聞かれますが「古い設定のままにする」を選べばディレクトリ名が英語のままキープされます。
ファイルマネージャーのサイドパネルのショートカットは日本語名のディレクトリにリンクされているので、新しく作った英語名のディレクトリにリンクし直します。
英字キーボードを設定する
オウルテックの、折りたためる英字配列のBluetoothキーボードを持っています。セットアップはJIS配列のUSBキーボードで行いましたが、普段使いはこのキーボードにしたいです。
このキーボードは擬似的にJIS配列のキーボードとしても扱えるのですが、当然ながらキートップの印字と実際に入力される内容に差異が出て使いづらいので、英字キーボードを設定し直します。
sudo dpkg-reconfigure keyboard-configuration
ターミナルで上記のコマンドを実行するとキーボード配列を選べるので、Generic 105-key PC (intl.)⇒English(US)⇒English⇒The default for keyboard layout⇒No compose keyを選びます。
Mozcのキー設定で、Ctrl+Spaceを半角全角キー代わりのIMEオンオフに割り当てると、英字配列のキーボードでも日本語入力ができます。
ブラウザをインストールする
ミニマルインストールの場合、ディストリビューションによってはブラウザが入っていないことがあるので、まずはFirefoxをインストールしておきます。
sudo apt install snapd
sudo snap install firefox
aptでFirefoxを入れようとすると何故かフォントがぶっ壊れてしまうので、snapからインストールします。flatpakでも良いと思います。
ブラウザはそれぞれ好みがあると思いますが、僕はFirefoxとChromium系のブラウザを入れています。今日日あまり無いとは思いますが、どちらかのブラウザでうまく見られないサイトでも、もう片方のブラウザだったら閲覧できるかもしれないという寸法です。
ちなみに、Firefoxは画面をスワイプしてもページがスクロールされません。(Ubuntuを除く)/etc/security/pam_env.confに以下を追記すれば対応できます。元々色々書いてあってコメントアウトされていますが、一番下に追記すれば大丈夫です。
MOZ_USE_XINPUT2 DEFAULT=1
これを書き込むことでログイン時に環境変数MOZ_USE_XINPUT2 DEFAULT=1が読み込まれ、FirefoxやThunderbirdなどのGeckoベースのアプリケーションで、タッチパネルからの入力を受け付けるようになります。
仮想キーボードを設定する
Windowsタブレットの場合、キーボードから切り離してタブレットとして操作したいところですが、残念ながらLinuxディストリビューションでタッチ操作に最適化されているのはUbuntuぐらいなものです。Ubuntu24.04ではデフォルトでGNOMEのオンスクリーンキーボードが使えますが、それ以外のディストリビューションで仮想キーボードを使うならOnboardが第一選択となります。
Onboardは外観をカスタマイズできるほか、画面下部に拡大表示してタッチ入力しやすいようにもできます。
sudo apt install onboard
ただし、Ubuntuフレーバーではデフォルトの設定だとOnboardがクラッシュしてしまうので、設定画面から入力イベントソースをXinputからGTKに変更することで、まずは仮想キーボード自体が使えるようになります。
これだけで済めば話が早いのですが…Onboardの日本語配列は若干変です。シフト押下で、大なり小なり(<>)とチルダ(~)がなぜか2つ現れる一方で、パイプ(|)とバックスラッシュ(\)が現れず入力できません。
ありがたいことに、2013年に有志が作った良い感じのOnboard用日本語配列「Akira」があるのでそれを使います。Onboardのユーザー定義配列用ディレクトリ(~/.local/share/onboard/layouts)にダウンロードした配列を移します。xmlファイルはファイル名変更で拡張子の部分を消します。
すると、Onboard設定からユーザー定義配列「Akira」を選択できるようになります。
大なり小なりとチルダは相変わらず2つありますが、パイプとバックスラッシュを入力できるようになります。
なお、Onboardは、デスクトップ環境によってはログイン画面やロック画面に表示できるので、キーボードを接続していない状態でロックされても復帰可能です。(Xubuntu、Linux Mint Xfceなど、Xfce系のデスクトップ環境)
KDE plasma系のデスクトップ環境(Kubuntuなど)ではログイン画面やロック画面にQtVirtualKeyboardが出るので、ロック解除はそれを使えば問題ありません。
Lubuntuでは残念ながら、ロック画面にどうあがいてもOnboardを出すことができません。この一点がネックとなるので、WindowsタブレットにLubuntuをインストールするのは全くおすすめできません*1。
タッチジェスチャーを設定する(Xfce系)
画面を左にスワイプしたら前のセッションに戻ったり、2本指を外側にピンチするように動かしたら画面をズームできたりといったタッチジェスチャーを設定すると、タブレットとしての使用感が良くなります。
Ubuntu、Kubuntuはデフォルトである程度タッチジェスチャーに対応していますが、XubuntuやLinux Mint XfceなどのXfce系はデフォルトでタッチジェスチャーに対応していない場合が多いので、toucheggをインストールします。
sudo add-apt-repository ppa:touchegg/stable
sudo apt update
sudo apt install touchegg
Xfceセッションのスタートアップに「touchegg &」を追加しておくと、ログインと同時にタッチジェスチャーが使えるようになります。
なお、Xfceでは何故かダブルタップがダブルクリックとして認識されません。デスクトップやThunarの設定を弄って、アイコンをシングルクリックで開けるようにしておきましょう。デスクトップは設定マネージャーでデスクトップの設定を開き、アイコンのタブを選択後「シングルクリックでアイテムをアクティベートする」にチェックを入れます。Thunarはタスクバーの編集タブから「設定」を選び「動作」タブで「シングルクリックでアイテムをアクティブにする」にチェックを入れます。
WindowsタブレットにおすすめのLinuxディストリビューション
以上、僕がWindowsタブレットにLinuxディストリビューションをインストールする際の初期設定をまとめました。Linuxを使い始めるための初期設定って、毎度同じことをするはずなのに、いつも「あれ?なんだっけ?」となりがちなんですよ。特に英字キーボードの設定方法を忘れがちです(笑)この備忘録が、僕と同じような悩みを抱えた皆様の参考になれば幸いです。
最後に、WindowsタブレットをLinux化するうえでおすすめのディストリビューションを紹介してこの記事を締めます。(CinnamonやMATEなど、まだほとんど使ったことのないデスクトップ環境もあるので、試し次第追記していきます。)
Ubuntu
デフォルトでジャイロセンサーによる画面自動回転や仮想キーボード、タッチジェスチャーなどに対応しているので、タブレットにインストールするディストリビューションの最右翼ではないかと思います。UIは強いて言うならMacやAndroidと似ており、直感的に操作できます。
唯一のネックはデスクトップ環境のGNOMEがタッチ操作に高いレベルで対応している分、タブレットに要求されるスペックも高くなってしまうことです。一応RAMが4GBあれば動かせはするのですが、余裕を持って動作させるには少なくとも8GBは欲しいところです。LinuxはWindowsより軽量な場合が多いと言いつつも、Ubuntuに関してはWindows10よりリソース消費が少し軽いぐらいです。
言い換えると、スペックが十分ならUbuntuを入れておけば間違いないと思っています。このページに書いた初期設定の大部分を省略して使い始められるので。
Kubuntu
Ubuntuと比べると若干タブレットよりもラップトップ向けの操作感ですが、Ubuntuよりもやや軽量に動作し、UIがWindowsに似ているのでWindowsPCからの移行がしやすいです。カスタマイズ性もUbuntuと比べると高く、外観やウィンドウの挙動を細かく弄れます。タッチジェスチャーにもデフォルトである程度対応しています。
ログイン画面とロック画面では仮想キーボードが使えますが、デスクトップセッションで仮想キーボードを使いたい場合には別途導入する必要があります。
Linux Mint Xfce
Ubuntuを動かすのにやや心もとないスペックのラップトップやタブレットに入れるなら、個人的にはLinux Mint Xfce一択だと思っています。XubuntuではなくLinux Mintにする理由は、操作感が親切で(こちらもWindowsライクです)、パッケージ更新もGUIから行えて、初心者でも比較的取っつきやすいからです。
仮想キーボードとタッチジェスチャーは別途導入する必要があります。